〜閑話休題〜
他人の悪口ばかりだと(読んでくださる方も書く私も)気分が悪いので、良かった展覧会をひとつ。
私の大学院時代の先生だった田淵俊夫先生の展覧会が渋谷の松濤美術館で行われていたのを観てきました。
数年前に藝大の教授を退官されて以来、私は先生の絵その後を知らなかったのですが、今回の展示では、生涯を作風の変遷がわかるよう
各時期の作品が数点ずつあり、最後に今年制作された大きな作品が2点展示されていました。
この、現在の田淵先生の心境による作品に私は心揺さぶられました。東日本大震災後に何を描くべきか迷った末にたどり着いた絵だとの
コメントがついていましたが、私が勝手に画家・田淵俊夫先生として決めつけていた人物像の枠を大きくはみ出して感じられたからです。
なんといいますか、「ああ、若いころにしっかり鍛錬していた画家は、その後大きな心の変遷にも対応して新たな作風を生み出せるのだなぁ」
といった感慨をうけました。
「それは、あんたが勝手に先生を軽んじていただけじゃないか。」といわれれば、そうかもしれません。
しかし、いつまでも尊敬できる誰かの後ろを追いかけたいと思っている子供っぽい私には、田淵先生がこれまで思っていた以上に
大きな存在でいてくれたことが、なにか嬉しかった鑑賞後の心持ちでありました。